背景:エナメル被覆の絶縁試験

産業用や車載モータをはじめ、半導体インバータによる回転機駆動が一般的になりました。インバータにはSi半導体が用いられてきましたが、最近では次世代半導体材料であるSiCを始め、飛躍的にスイッチング性能を向上した半導体がインバータに導入されつつあります。一方で、これらの高性能インバータに対し、回転機巻線における電気絶縁は厳しさを増しています。絶縁試験の高度化にむけて、高速な立ち上がりをもつパルス電源が重要となります。

高速パルスに対するモータ内部での高電圧発生

半導体インバータの高速化にともない、モータ内部においてコイル巻き始めに印加電圧のほとんどが集中してしまう現象が問題となってきています。学術論文(K. Kikuchi et.al., 2016 EIC, DOI: 10.1109/EIC.2016.7548705)でも報告された通り、モータのU-V間に印加した矩形波の立ち上がり速度が増加するにしたがい、コイル巻き始めの電圧(下図Ua-Ub)が増大していきます。想定以上の高電圧が発生することによりモータ巻線の絶縁劣化が早まるという問題が発生します。

モータ巻線に高電圧パルスを印加した場合に発生するスイッチング波形(K. Kikuchi et.al., 2016 EICより引用)

モータ巻線の巻き始めに発生する高電圧(K. Kikuchi et.al., 2016 EICより引用)

ナノインパルス電源

これらの問題に対し、ネクスファイ・テクノロジー株式会社では独自の技術によりSiC半導体素子を直列接続し、10 kV以上の高電圧を高速にスイッチングする技術を確立しました。正負10 kVの電源に対して100 ns以下の高速な立ち上がり・立ち下がり波形を実現しています(負荷に依存します)。また外部付帯回路によりスイッチング速度を変化させることが可能です。

正負10 kVパルス電源における立ち上がり・立ち下がり波形

外付けユニットにより立ち上がり速度を変化させることが可能(追加オプション)